デヴィッド・ボウイの通算5作目にあたる今作は、彼の最高傑作であるばかりではなく、ロックの最高傑作の一つと言っても過言ではないだろう。なぜなら「ロックはメディアだ」という彼の名言通り、その後のロック・メディアに確固たる礎を築くことになるからだ。それ以前にも「サージェント・ペパーズ~」や「トミー」、「ペット・サウンズ」、「フリーク・アウト」など、他にもたくさんのコンセプト・アルバムは存在していた。しかしここにはコンセプト以上に進化した壮大な物語がちりばめられている。それが「ジギー・スターダスト」という集約された創造であり、大いなる比喩であり、巨大なペルソナだ。
ボウイというアーティストの最大の特徴の一つとして"ペルソナ"という架空キャラクターが挙げられる。これまでにも彼は「トム少佐」、「アラジン・セイン」、「シン・ホワイト・デューク」、「ダイアモンド・ドッグス」などの演劇的偶像を作り上げてきたわけだが、「ジギー・スターダスト」は存在感・独自性の点でも際立っているといえよう。'73年の初来日でも「自分の中に宇宙を創造したい」と言ったとおり当時のボウイはハインライン、オーウェル、クラークなどのSFを読み耽り、充分咀嚼した上で「火星のスパイダーズ」を伴ったロックスター「ジギー」を降誕させた。
「自らの肯定と否定を同時に語る意識の高さ」といわれたデヴィッド・ボウイ。彼は破壊と再生を繰り返すアーティストである。そこには人や文化が進化する為には避けられない、テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼというプロセスが極めて明示的に具体化されていた。1曲目の「ファイブ・イヤーズ」からラストの「ロックンロールの自殺者」まで一気に駆け抜ける曲の数々は、スターを渇望する我々聴衆とスターとの悲劇の弁証法であり、盛衰の発見である。そしてメディアの、聴衆の真っ只中で我々の為に今なお泣き、熱狂し、死亡し続けているという、奇跡的な物語の体験がこのアルバムなのである。
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