脱オルタナ臭さ漂うベックのセカンド。"Loser"で大ヒットした時はワン・ヒット・ワンダー(一発屋)の印象が強かったベックだが、この"Odelay"でその名がロック史に永遠に刻まれることとなった。本家オルタナと比べると格別な脱力感&Lo-Fi感がある。日本ではその容姿のキュートさから女性にも人気がある(ライブなどで顕著)ようだが、したたかに覚醒したポップ・スターを演じている感覚が実に現代的。祖父が現代美術団体フルクサス(ヨーゼフ・ボイスやナム・ジュン・パイク、ヨーコ・オノ、ジョン・ケージなどが有名)のメンバー、アル・ハンセン。そして両親が揃って芸術家という家庭に育った彼だけに、アーティスト・エゴに惑わされず時代に対峙するポップ・ミュータントになったのも頷ける。
ダスト・ブラザーズとの共同プロデュースによって作り出された今作は、現代アメリカのメルティングスポット的見地とポップ・ミュージックであることのアイロニー、そしてロックの遺産をあざ笑うかのような大胆なサンプリングとコンテキストが聴き所。キャプチャ元のリソースはそれこそ、ジェームズ・ブラウン、ビートルズ、ヴァン・モリソン、ボブ・ディラン、グラム・パーソンズ、カントリー&ウェスタン、ラテン、パンク、ノイズ、ブルース、ジャズと、一昔前ならフランク・ザッパを彷彿させるような強力な折衷感だ。それをより現代的に、つまりヒップホップやR&B、ソフト・ロック等をベック流に豊かにアレンジしている点がさすが。
このアルバムを聴くと底抜けに深い音楽の楽しさと、ロックというジャンルの持つポテンシャルにまだまだ未来を感じる。ジョニー・ロットンが「ロックは死んだ」と叫び、ビリー・コーガンが「ロックに未来はない」とつぶやき、ビル・ラズウェルが「音楽は出尽くした」と言った。しかしそんな傍ら、ベックはまるで子供がおもちゃで遊ぶように音を拾い、凡百のサンプルを繋ぎ合わせ、身近にある何気ないものを自在に変化させて美しい怪物に作り変える。そして間違いなくこのアルバムによってその後のロックシーンは大きく変わった。正に世紀の重要作の一つであるといえる。
0 件のコメント:
コメントを投稿