2012年12月30日日曜日

Standard Time Volume 1|Wynton Marsalis



 "Standard Time"シリーズ最初の一枚にあたる今作は発表当時の印象は地味なものだった。これまでウィントン・マーサリスといえば「Wynton Marsalis」「Think Of One」などで見せた驚異的なテクニックと派手なフレーズ、それに"V.S.O.P."や"Jazz Messengers"などで見せた激烈でハードなバンドサウンドの話題が先行することが多かった。しかしながら「JMood」「Black Codes」辺りからじわりと熟練したグルーブを聴かせ始め、今作で一つの完成した領域に到達した。

 タイトル通りジャズのスタンダード、しかも名曲ばかりを扱ったこのアルバムは他のアーティストのスタンダード曲集とは少し趣が違う。例えばラテンビートから始まる"Caravan"や変拍子の嵐"枯葉"などにも緻密なアレンジと高い演奏力が伺えるし、原曲を修飾する淀むところのないフレーズの豊かさとクールな緊張感も新しい「スタンダード」を提示したといっていいだろう。何よりすばらしいのはプレイヤーのリーダーアルバムで終わるところがなくグループとしての複雑なインタープレイが楽しめる点にある。

 このアルバムはじっくり何回も聴くことをお勧めする。なぜなら複雑に絡み合った互いのプレイの妙は一聴してもすぐにはわからないからだ。そして、ジャズマニアにもジャズビギナーにも偏見なく勧められる、今聴いても“新しい”発見のある「スタンダード」である。

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